ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

朝だ

朝だと思った。

時計は、長い針と短い針が揃っててっぺんをまわったところ。もちろん、窓の外は暗いし、人の気配はなく、部屋の明かりは煌々とついていて、世界基準にはまったく夜。それでも、朝だと思いました。

 

ずっと先延ばしにしていたことがありました。

世界的騒動の以前から目前に横たわっていたけれど曖昧につきあっていて、騒動がいよいよわたしたちの生活を脅かしはじめたころに進捗が滞って、それをきっかけに曖昧にしていたすべてが決壊したかんじ。改めて見返して、なかなかでかい山だったんだな、とコトの重大さに気づきました。それでも、世界はまわります。

自粛ムードに胡坐をかいて見て見ぬふりをしていたけれど、どうにも越えなければ先に進めず、2ヶ月間放置してようやく向きあいました。問題を分析して、対策を検討して、まっすぐぶつかりました。でかいと思っていた山は、案外歩きやすい道がついていて、わたしは、山の全貌を前に怖気づいていただけでした。ほう、とため息ついたのが、その日、長い針と短い針が揃っててっぺんをまわった頃でした。

 

遠くで、鳥が鳴きました。

くあ、くあ、と高い音で、夜を割くようにどこまでも響かせました。

窓の外は真っ暗だし、頭上で人工的な白い明かりがちらちらしているし、人の動く気配は一切ないけれど、朝だと思いました。

朝だ。私の朝だ。