ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

勉強机

「勉強机、もう捨ててしまって構わないんでしょ」 母が言いました。 実家の狭い自室で、スペースの4分の1を占める勉強机(4分の2はベッド、のこりは通路)。たしかに、大学進学とともに家を出てからそこへ向かったことはなく、いつしか物置になり、椅子も取…

地域ことば

方言というのでしょうか。この地域に来て初めて耳にした言葉があります。わたしは道南出身で、道北、日本海側の通称・北海道の左上に暮らして6年目。ようやく、地域の方にも住民として認められた感があります。それでもやっぱり、地元と移住者の違いを感じる…

友だちのはじまり

「いつからこんなに仲良くなったんだろうね」 お酒が入るうち、そんな話をすることがあります。「ほら、あのとき」とか「あそこであなたが」とか、すぐに答えられる友人もいれば、しばらく悩んで「なんでだっけね」と笑って終わる友だちもいます。 「誕生日…

小学生から読む高橋留美子作品

わたしは、「らんま1/2」でひらがな、カタカナ、漢字を覚えました。 父が漫画好きで、実家の本棚には「北斗の拳」やら「こちら葛飾区亀有公園前派出所」やらがありました。力強い線で書き込まれたそれら作品は、小学生になりたてのわたしには少々刺激が強く…

うんどう

引っ越しに際して、諸々の手続きをしに出かけました。いつもは車でびゅんと行ってしまうところだけれど、不幸なことにこのタイミングで壊れ、手放してしまったので渋々歩いて出かけます。3月といえど北海道の左上。陽がさしていても、雲が出たり風が吹いたら…

人生を楽しんでいない人間の部屋

「人生を楽しんでいない人間の部屋だ」 初めてわたしの部屋を訪れたその人は、ぐるりと見回して言いました。 その部屋から、今週末引っ越します。 1LDK風呂トイレ別、日当たりが良く、飲み屋街から歩いて帰ってこれる距離。暮らしてまる5年たつけれど、昨日…

おはなしできない

毎年この時期は、春から小学生になる地域の子どもたちにインタビューします。お名前、1年生になったら楽しみなこと、将来の夢。150人前後の子どもたちへのインタビューは十人十色、子どもらしさや時代を感じる回答もあって、楽しみな仕事の1つです。 「お名…

自分宛のハガキ

大学時代から集めているものがあります。 旅先から送る、自分宛のハガキ。 寂れた土産物屋の片隅にあるハガキから、なるべくその地域らしい風景写真を選んで、旅の思い出を綴り自分の住所と名前を書いて、投函。すると旅をした日付、地域の消印が押されて、…

香り

1年くらい前に、好きな広告がありました。 SNSや動画投稿サイトの合間に流れるCM動画。見たことはあるけれど名前を知らない海外の綺麗な女優さんが、表情を美しく変えながら、人として女性として、暮らしを謳歌する映像。それにあわせてプロモートされるのが…

ルームシェア

「やめなよ、ルームシェアなんて」 誰かが言いました。1年前、市内の一軒家に空き情報があって、友だちが「ルームシェアしない?」と声をかけてくれたのです。楽しそう!とワクワクしながら、だれかれ構わず「ルームシェアするかもしれない」と話していると…

冷凍保存したい年齢

「最高の年齢だな。冷凍保存したい」 夏の日差しが漏れる木陰で、登場人物が言いました。青々とした陽が浮かび上がらせる彼らの顔は、たしかに、若さと希望に満ち溢れています。 「冷凍保存したい年齢」があったでしょうか。 中学時代は、友だちと笑っている…

季節を告げる

「今年も出したよ」 母からメッセージ。一緒に送られてきた写真を見て、ああもうそんな時期か、と季節の移ろいを感じます。 母はまるで、季節を告げる渡り鳥のようです。 春になると「今年、庭で初めて咲いた花です」と写真が送られてくるし、夏になると「店…