ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

ふきの煮物、あまいかしょっぱいか

はじめてつくったフキの煮物が、しょっぱかった。 味見をしながら調味料を加えていたはずだし、味に納得したつもりで火を止めたけれど、冷まして器にあけてみると、しょっぱい気がしました。改めて見ると醤油の色が濃いし、味醂がてらっとしています。どうし…

SNS

ぴこ スマホの通知で目を覚ましました。見ると、1回目のアラームが「俺はちゃんと鳴ったぞ」と主張するとともに、SNSのメッセージ通知。友だち追加したけれどついぞやりとりのなかった知り合いから「以前お好きだと伺ったバンドが、新聞に載っていましたよ」…

ふきの煮物

「あいちゃん、食べたいって言ってたから」 山菜友だち(山菜を採ってきてくれる友だち、の意)がほしいと公言していたら、本当にいただきました。山菜が採れる山は目と鼻の先にあるけれど、どんな山菜を、どれくらいが食べ頃で、どんな風に食べたらいいかな…

サボっている

実家で眠って、夢を見ました。 わたしは学生で、懐かしい校舎にいました。友だちといて、でもその友だちの顔はぼやっとしてよくわかりません。ただ、彼女がわたしを冷たい目で見て、非難する言葉を発して、それを遠巻きに眺める人々の輪郭だけがはっきりして…

人をダメにする実家

「あなたがそう言うから、こっちで空きアパートとか見てたのよ」 母が言いました。わたしが仕事を辞めると言ったとき、家族は意外なほどすんなり受け入れてくれました。心配はされたものの、体調不良とか人生に絶望してとかいった理由ではなかったので、まあ…

実家には、猫がいます。 元野良の彼はどっしりとした体格の黒猫。保護した当初、鼻炎気味ですぴすぴ鼻を鳴らしていましたが、今ではすっかり健康です。ぽっこりお腹に毛並みをツヤツヤさせ、一緒に暮らす犬をからかっては家族に叱られています。 わたしは猫…

女の答えは

本を貸してもらいました。プロレス好きの先輩が、プロレス好きのライターさんの新刊を読んでくれといって、貸してくださいました。 わたしは、プロレスが特別好きということではありません。その先輩の話を聞き、興味を持って見に行ったことはあるけれど、そ…

犬とおばあちゃん

なんだかどうも、気乗りしない日でした。昨日の8時間講習会の疲れでしょうか、その後の、親よりも歳上の方との飲み会でしょうか、それとも、上手く暮らしを営めない自分への失望でしょうか。 朝起きたけれど日課のストレッチができず、時間だけがダラダラと…

新しい家には、大きな窓があります。居間に設けられた、床から天井までの窓。そこからサンルームにつながるため明かりとりとしてはイマイチで、曇りの日なんかは照明をつけて生活しています。窓を背にソファが配置され、日中、作業するときはそこへ座ります…

公園の思い出

わたしが大学4年生になる頃、妹が大学1年生になりました。2人暮らしを始めました。わたしは卒論とバイトと就活で生活リズムなどあってないようなもの、妹は資格取得のために学校へ通っていたので朝早く家を出て日が暮れてから帰ってきます。生活がすれ違い、…

続・右向きで寝るか、左向きで寝るか

「誰しも1つは不思議な話を持っている」とは、怖い話マイブームのさなかに出会った怪談師さんの言です。生きていれば大なり小なり、1つは不可解な出来事に遭遇していて、そういった体験談を聞かせてもらって語っているというお話でした。わたしにも不思議な…

美しい世界

「もしも英語が使えたら」 文章を読んで、文章を書くでしょう。 海外に憧れた時期がありました。留学するという先輩や、海外旅行に行くという友だちにとびきり羨望の眼差しを向けて、それでも、動くことはありませんでした。英語を学んで使う努力をしたら良…

月が綺麗だよ

「なんなに〜聞かせて〜!」 隣の部屋が、ワッと盛り上がりました。グラスに氷を足して、ウイスキーに炭酸水を注いで戻ると、室温が2度ほど上昇したような熱気。人の輪の空いたところに座ると、話題の中心は、みなが向けている視線でわかりました。 「久しぶ…

右向きで寝るか、左向きで寝るか

わたしは、壁に背を向けて眠ります。それは小学生の頃から染みついた癖のようなもので、6歳のころ、小学校にあがりたてのわたしは3つ下の妹と2人で眠っていました。居間の隣にある寝室で、妹、母、わたし、父の順に並べられた布団。父は仕事で帰りが遅く、母…

窓ガラスを割ってしまった

ぱちん 窓ガラスを割ってしまいました。部屋中に掃除機をかけてやろうとテーブルを持ち上げたら、その角が窓枠の内側にはまっている曇りガラスに当たって、割れました。あまりにあっけなく割れてしまったので、その断面を確認して、ガラス片をかたづけて、部…

眠れない夜

「いや、その話きかせてください」 時計を見ると、日付が変わる30分前。彼女とわたしは画面越しに対峙して、かれこれ3時間半、話をしているということになります。アルコールが入るわけでなく、終始ワハハと馬鹿話をするわけでなく、3時間半。 ウイルス禍に…

白い机

「これ持って行ってってば」 父に言うと、すごく嫌な顔をします。まあそれはそうでしょう。高さ60センチほど、幅奥行き50センチほどで、脇には天板が折り畳まれた木製机。わたしが大学進学とともに購入したものでした。勉強机として置いていたのですが、低い…

やっぱりわたしは文章を書いて生きていきたい

「ちょっとご相談がありまして」 仕事を辞めました。無職です。なんで辞めたのかとか、今後どうするのかとかいう話はまあ、もう少しわたしの中で綺麗に整理できてからにしようと思います。いまは、社会的な自己ステータスを無職に切り替えることに忙しくして…

抜け道

「そんな遠回りをしているの!?」 先輩は、目をまん丸にして言いました。先月末に引っ越した先がたまたま先輩のご実家近くで、「歩いて街に行くときに使うルート」というご近所トークをしていたら、もっと良い抜け道があると教えてくれました。 たいそう飲…

魚の骨

「そんなことあったっけ?」 母は笑って言うけれど、わたしにとってその出来事は、あまりに衝撃的でした。 幼少期、たぶん、6、7歳のころ。母、妹と3人で食卓を囲んでいました。夕飯のメニューは、白米に味噌汁、青菜と卵を炒めたものと、紅鮭。母はいつも、…

ぬくぬくとした場所で生きてきた

この4月からひとり暮らしをはじめたという新社会人、新大学生の諸君、ひとり暮らし歴10年のわたしから言わせてもらおう。寒さには屈しなさい。電気ガス灯油代を気にして、意地をはって着込みに着込んで生活したところで、自然の方が何億倍も強い。寒いなか暮…

コーヒーといちご

実家から、北海道の左上までは車で4時間。ぶっ通しで走り続けて4時間なので、トイレ休憩や飲み物休憩を含めると5時間ほど。その日はよく晴れていて、エアコンも必要ありませんでした。 燦々とさしこむ陽の光を感じながら、北へ。2時間ほど走ると雪が目立ち始…

「このまえあなたと行ったあそこ、わりと面白かったね」 母が言いました。ガッツポーズ。それは、まがりなりにも「旅」でした。 わたしは「旅行」と「旅」をつかいわけます。 「家族旅行」や「観光旅行」などで使われるそれは、複数人で遠出し楽しむ「旅行」…

勉強机

「勉強机、もう捨ててしまって構わないんでしょ」 母が言いました。 実家の狭い自室で、スペースの4分の1を占める勉強机(4分の2はベッド、のこりは通路)。たしかに、大学進学とともに家を出てからそこへ向かったことはなく、いつしか物置になり、椅子も取…

地域ことば

方言というのでしょうか。この地域に来て初めて耳にした言葉があります。わたしは道南出身で、道北、日本海側の通称・北海道の左上に暮らして6年目。ようやく、地域の方にも住民として認められた感があります。それでもやっぱり、地元と移住者の違いを感じる…

友だちのはじまり

「いつからこんなに仲良くなったんだろうね」 お酒が入るうち、そんな話をすることがあります。「ほら、あのとき」とか「あそこであなたが」とか、すぐに答えられる友人もいれば、しばらく悩んで「なんでだっけね」と笑って終わる友だちもいます。 「誕生日…

小学生から読む高橋留美子作品

わたしは、「らんま1/2」でひらがな、カタカナ、漢字を覚えました。 父が漫画好きで、実家の本棚には「北斗の拳」やら「こちら葛飾区亀有公園前派出所」やらがありました。力強い線で書き込まれたそれら作品は、小学生になりたてのわたしには少々刺激が強く…

うんどう

引っ越しに際して、諸々の手続きをしに出かけました。いつもは車でびゅんと行ってしまうところだけれど、不幸なことにこのタイミングで壊れ、手放してしまったので渋々歩いて出かけます。3月といえど北海道の左上。陽がさしていても、雲が出たり風が吹いたら…

人生を楽しんでいない人間の部屋

「人生を楽しんでいない人間の部屋だ」 初めてわたしの部屋を訪れたその人は、ぐるりと見回して言いました。 その部屋から、今週末引っ越します。 1LDK風呂トイレ別、日当たりが良く、飲み屋街から歩いて帰ってこれる距離。暮らしてまる5年たつけれど、昨日…

おはなしできない

毎年この時期は、春から小学生になる地域の子どもたちにインタビューします。お名前、1年生になったら楽しみなこと、将来の夢。150人前後の子どもたちへのインタビューは十人十色、子どもらしさや時代を感じる回答もあって、楽しみな仕事の1つです。 「お名…