ほとほとの煮物

お口にあうかどうか

2020-01-01から1年間の記事一覧

死ななくてよかったね

お盆、家族でドライブしました。リゾート地となっているところから少し外れた田舎道、高い山をのぞむ橋べりに車を停めて休憩。川端の道を歩くうちに、母が、あっ、と高い声をあげました。 「サルナシだよ、とって」 母より頭一つぶん身長が高いわたしが背伸…

しらないこと

しらないことって、まだまだいっぱいあるんだな。そうして、月に1度はしみじみします。まさに「しみじみ」が正しくて、新しい知識をゆっくり噛みしめて、脳にじんわり沁みこませるイメージ。今月は、「時計」でした。 新しい腕時計を買いました。 小さなころ…

春のきいろ、夏のきいろ

北海道の左上は、美味しいお米も自慢です。 日本海沿いの街から山際へ走ると、道の両脇が一面、田んぼにかわります。田んぼは、季節を映します。春は静かに水をたたえて鏡のように、夏は青々とした稲を揺らして、秋は一面黄色の海、冬は静かな雪原が広がりま…

いま何してる?

「これから、そっち行っていい?」 帯広に住む彼女は、出張で旭川に一泊した朝、そう電話してきました。帯広留萌間は5時間だけれど、旭川留萌間は1時間半。彼女と、ふだんよりずっと近いところにいます。 旅行が好きです。 知らないところへ行き、初めてのも…

秋がちゃんと

「さむっ」 会社をでて一言。すっかり日が暮れて空は群青。雲の合間から星がちろちろしています。糸くずの様に細い月が、ふいて飛ばせそうでした。七分袖のシャツから出た肌をさすって、気休めの暖。秋です。 北海道の夏は、お盆とともに終わります。 本州で…

わたしの味

ひとりぐらしなので、料理をします。 食材をそろえて台所にたって下拵えをして食器をあらって…しなくてもまあ生きてはいけるのだけれど、好みの味でおなかを満たしたいときがあります。「好みの味」というのは、たいてい「お母さんの味」。 自炊をはじめたこ…

とうきび

じゃがいも、とまと、きゅうり、なす。 幼いころ、小学校の畑や母がつくる家庭菜園で収穫した野菜です。陽が高くなるまえ、気温が上がりきらないうちに雑草をぬき、陽のかげる一日のおしまいにジョウロいっぱいの水やり。夏のあいだにコツコツと育てた作物た…

かえりみち

夜のかえりみちが好きです。 車を走らせて、道路の脇の民家の明かりを追い越しながら、自宅を目指します。民家には大中小の窓があって、カーテンがひかれていたりブラインドがさがっていたり、夜の明かりを遮るものがなくて蛍光灯や机のライト、タンスや本棚…

共通言語で

仕事柄、さまざまな方とお話させていただきます。もともと、よどみなく熱量をもって話をする人が大好き。夢中で言葉を紡ぐ熱量に憧れます。 もちろん、わたしに予備知識のあるお話ばかりではありません。生活していても、知りたいと思うことは能動的に調べる…

たのしみひとつ

わたしは朝シャワー派。 くせ毛なので、夜に渇かした髪をその状態で朝陽がのぼるまで保っていられません。少し早めにベッドから抜けでて、まずはお風呂。髪を洗い身体を流しながら、1日の予定とそれにあう服装を考え、それなら化粧は、靴は、と頭の中の引出…

水たまりを蹴散らして

ひさしぶりに自転車に乗りました。 車を点検に出してしまったので、その代車です。毎日出社していた格好は自転車に不向きで、ロングスカートのスリットから素足がでて、髪は風に煽られ視界を阻み、道にできた水たまりを避けるのもひと苦労です。気を抜いた瞬…

まだ見ぬまちへ

北海道に生まれて、北海道に育ちました。 出身は太平洋沿岸、大学進学とともに内陸の都市部へ出て、さまざまなところを旅しました。いまは北海道の左上、日本海沿岸に暮らしています。 この週末、行ったことのない地域への旅行を計画しています。 道内ほとん…

悪夢の間を彷徨って

雨が降っていました。 午前中から空をおおった重たい雲は、雨粒を蓄えて濃く大きくなっています。窓を開けてみるけれど風向きか湿度の高さか、期待したほどの涼しさはありません。うちわをパタパタやりながら事務机に向かい、うまく働かない頭を一生懸命に動…

音楽とともに

目が覚めました。 時計を見ると、アラームのなる8分前。最近は、休日でも決まった時間に目が覚めます。仰向けに寝るすぐ目と鼻の先で、レースカーテンが躍っていました。平日と比べてずいぶん穏やかな窓の外。車も人もゆったりして、気持ちを急かないので休…

午前2時の憂鬱

午前2時、失敗しました。 日々の怠惰が仇となってカタチを成し、目前にまざまざと横たわりました。心臓がどくどくいって、体温が1度一気に下がって、爪先が震えてスマホの画面にあたり、カツカツと音をたてました。 窓の外は静かで、時おり車が走り去るくら…

よっぽどワクワクするところ

2ヶ月かけて企画したイベントが、いよいよ開催を迎えます。 ウイルス禍に押しこめられていた意欲を爆発させた、小さなまちのイベント企画。はじまりは、外出自粛要請が解除されたまちの焼き鳥屋さん、そのカウンターでした。数か月ぶりの外飲みに会話が弾み…

赤に誘われて

仕事がひと段落して顔を上げると、廊下が真っ赤。 職場の玄関は2階で、西向きにつけられた窓から日本海にひらけた漁港が見えます。晴れた日には西日が入って絶好のシャッターチャンス。建物の裏に走る線路、その向こうに広がる夕焼け空、1日のおしまいの光を…

記憶のなかの、遠いあの日へ

携帯に通知。 サブスクリプションサービスを利用して音楽を聞いています。好きなアーティストを設定すると、新曲など更新の都度に通知がきて便利。その日も、通知を受けて携帯をとりました。 若い主観を情感たっぷりに歌うバンド。予想もつかないメロディラ…

偏頭痛

花のにおいがしました。 2週間ぶりの雨。気にならないくらいの雨粒が落ちては止んでをを繰り返していた午前中。陽が傾きだすと、さあ、と音がするほどの滴がまちをすっかり包みました。突然の気圧の変化にわたしの身体は耐えきれず、つくつくと眉間の奥底を…

聴覚への乱暴

7月半ば、暑さも本番。ここからお盆にかけて夏らしい天気が続き、それをすぎるとぐっと秋めく北海道。エアコンを使うのがもったいなくて、家ではもっぱら、窓を開けています。自室は2階、車通りのある駐車場側に窓があるので、開けたまま寝ることもあります…

ポスター

「どうぞ、お好きなところに」 イベントのポスター掲示をお願いしています。人通りの多いコンビニにも貼らせていただきたくて、レジへ。おそらく高校生であろうアルバイトくんが不思議そうにこちらを見ます。 「すみません、今度このようなイベントをするの…

僕らの生活

ドライブ。 まっさおな空に浮かんだ雲は、ぽっかり大きくふくらんでいます。その影が道路に落ちて、ずいぶんゆっくり過ぎていきました。車はすぐに追いついて、通りぬけるたびに、車内が陰ります。 田んぼのまんなかの1本道。国道だけど片側1車線で、ガード…

彼女がいう自傷行為と

ピアス穴が、すっかり安定しました。 あけたて1週間こそ重たく熱をもっていた穴は、それをすぎると、触ってチリリとする程度。おしゃれして出かける機会に、つけっぱなしだったファーストピアスを抜きました。4ヶ月、わたしの身体にはまりつづけた小指の爪ほ…

そういう気分

急に、予定がくるいました。まちあわせの1時間前に、4時間の後ろだおし。それはないじゃん…家を出る前だったのがせめてもの救い。スカートを脱いで、パンツとサンダルコーデに変更。ヒールサンダルを履くと、すれ違う大抵の人より頭がとびだしてしまって、田…

どぼん、

わたしは今年、25歳。 でも、いまだに父から「ほら、よそ見してるとこぼすぞ」とか、「すぐこけるんだから」とか言われます。おそらく、父にとってわたしは、いつまでたってもわずか3歳の女の子なのでしょう。 「あんまり近づくなよ!落ちるぞ!」 も、そう…

村の食堂

「ねー、みんな彼氏いるよね」 北海道一人口の少ない村で、お昼を食べようと並んでいたときのこと。村唯一の食堂には、観光客はもちろん、地元の高校生が訪れます。わたしの母よりひとまわりは上のお母さんが曲がった腰でもくもくと調理して、息子さんがパキ…

ただ楽しいはなしを

はなしをしました。 全国的なウイルス警戒宣言の解除を受けて、どこへも行かずに人間関係や好きなものを温めていた3ヶ月が嘘のようです。交友が広がって、新しいことが始まって、生活が一気に加速し忙しく動いています。 そのうちの1つが、同世代の仲間との…

空を見るくらいしかない

中学からの友だちは、卒業すると、北海道で最も人口の少ない村に引越しました。美術を学びに行ったのです。地元の高校に進学したわたしにとって、家族と離れ寮生活をしながら好きなことを学ぼうと決意をした彼女が、すごく眩しく感じられました。結局わたし…

咲いた

「わたしの部屋には、鉢植え置かないで」 高校生のとき、母に言いました。 南向きで広くとられた窓は出窓になっていて、置いた植物はのびのびすくすく、元気に育ちました。当時わたしは、それが嫌でした。 自室にこもり、忌まわしい月曜日の影に怯える休日。…

かえりみち

車通勤しています。 歩けば15分ほどの道のりなのでそれくらい歩けば良いのだけれど、仕事で私用車をつかうので、車通勤せざるを得ません。わたしの生活は音楽とともにあるので、通勤時間もカーステレオを音楽プレーヤーと連動させます。車なら5分ほどの道の…